東京地裁に解散命令請求が出て以降、統一教会の被害に遭った方々をどのように救済するかをめぐり、自民・公明・国民民主による「被害者救済法案」、立憲民主・維新による「財産保全法案」について、国会で審議が行われていました。
各紙の記事、WEBメディアの記事を、よりよく理解して読み進めるために、これまでの経緯を整理します。

■自民・公明・国民民主⇒「被害者救済特例法案」を国会に提出。
 ●解散命令確定前に財産保全法をつくるのは、憲法違反。
 ●不動産の財産処分の監視を強化し、個別被害者の訴訟費用支援に取り組む。
  個々の被害者が、主体的に債権を確定させることが重要。

■立憲民主と維新は、それぞれが独自に提出していた法案を取り下げ、両党の法案を一本化し「財産保全法案」を提出。
 ●財産保全が憲法違反疑いは間違い。
 ●財産保全が入らないと、実効性に大きく疑問が残る。

これに対し、宗教2世など被害者の皆さんからは、代表的な意見として、次のようなコメントが事前に出ていました。
「自公国案はザル法。個人での闘いでは今後も教団に太刀打ちできない。国vs統一教会という構図にしてくれないと救われない。これでは、自民党自ら、教団側との関係を絶ち切れなかったことを証明しているようなもの。」
つまり、被害者自らが個別に立ち上がって、教団に対して訴訟を起こすことが前提となっていることで、家族からの分断や被害者の高齢化などにより、泣き寝入りをしてしまう被害者が多数出てしまうのではないかと、懸念が出ていました。

12/5国会審議では、立憲・維新の「財産保全法案」は否決され、自公国の「被害者救済法案」が衆議院を通過しました。「財産保全を必要に応じ検討する」という附則が付いたことで、野党が賛成にまわったためです。しかしながら、これでは被害者の方々の主張が置き去りにされたままのため、各紙ではその点について多数報道されています。
一部をご紹介します。

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旧統一教会の財産保全法案、成立へ 「残念な内容」被害者は落胆も

毎日新聞 2023/12/5 20:44(最終更新 12/5 23:55) 安部志帆子 高橋祐貴 春増翔太

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向けて、自民、公明、国民民主3党が提出した財産処分の監視を強化する特例法案の修正案は5日の衆院本会議で、3党に加え立憲民主党や日本維新の会、共産党などの賛成多数で可決、参院に送付された。今国会での成立が確実となった。

 法案に関しては、自公両党は国民民主と協議したうえで、3党で国が解散命令を請求した宗教法人の財産処分の監視などを強化する特例法案を提出。これに対し、立憲と維新は財産流出を防ぐため、包括的な財産保全を可能とする法案を提出した。

 自公国はさらに幅広く合意を得ようと、11月下旬から立憲・維新と修正協議を始めたが、隔たりは大きく難航していた。焦点は立維が主張する財産保全だった。宗教法人の海外送金など財産の隠匿・散逸の恐れがあれば、所轄庁などの申し立てにより、裁判所が保全命令を出せる内容だ。自民は、信教の自由などに抵触しかねないとして、「憲法違反のパフォーマンス」と批判。立憲、維新は、自民と旧統一教会との関係が続いていると疑い「及び腰」だと対決色を強めた。

(以降、有料記事)

上記引用元:旧統一教会の財産保全法案、成立へ 「残念な内容」被害者は落胆も

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旧統一教会の救済法案成立へ 被害者の民事訴訟を後押し

日本経済新聞 2023年12月5日 15:20 (2023年12月5日 16:11更新)

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に関する法案が5日、衆院本会議で可決され、今国会で成立する見通しとなった。解散命令を請求された宗教団体への被害者の民事訴訟を支援するのが柱だ。宗教団体による財産移転も監視して財産を保全しやすくする。

自民、公明、国民民主3党が提出した救済法案が同日の衆院本会議で3党や立憲民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決した。参院は7日の参院法務委員会で審議入りし、13日の会期末までに成立する公算が大きくなった。

与野党が法整備に動いたのは、政府が10月に教団への解散命令を請求したのがきっかけだ。

裁判所が解散を命じれば教団は法人格を失い財産は清算されるものの、その前に教団が他の場所に財産を移す恐れがあるとの懸念が広がったためだ。訴訟にかかる被害者の負担も重く、泣き寝入りとなるリスクがあった。

そこで自公国3党は救済法案に被害者が訴訟しやすくなる仕組みと財産移転監視の2点を盛り込んだ。

まず法律トラブルの相談窓口である日本司法支援センター(法テラス)を通じた民事訴訟の支援体制を強化し、弁護士費用の援助などを実施する。宗教法人法と法テラスの業務内容を定める総合法律支援法に特例を設ける。

教団が不動産を処分しようとした場合に備えて、管轄する行政機関へ処分前に通知するよう義務づけた。通知せずに処分した場合はすべての不動産の処分を無効にする。

救済法案とは別に、政府に海外への資産流出の防止について外為法の政省令改正も求める。解散命令請求を受けた団体について海外への送金などに必要な報告期間を短くしたり事前申請させたりして、財産移転を防ぐ案がある。

一方、立民、維新両党が国会に提出した法案は5日の衆院法務委員会で否決され、両党は自公国3党の修正案に賛成した。両党は宗教法人への解散命令請求が裁判所に出された段階で裁判所が包括的に財産を保全できる独自案を出していた。

立民の安住淳国会対策委員長は賛成にまわった理由について記者団に「財産保全を必要に応じ検討する」といった法案提出者の答弁で主張が反映されたと説明した。

自公国3党はその他の点でも立民と維新の主張を受け入れ法案を修正した。訴訟支援に関し、教団資産の仮差し押さえで必要になる担保金を国が支援すると明記した。

担保金の目安は財産の15〜30%ほどが相場となる場合が多い。全国統一教会被害対策弁護団の資料によると、例えば都内の教団本部を差し押さえる場合、担保金として最大2億3000万円ほどが必要となる。

被害者や代理人が教団財産を随時、閲覧可能にすることも修正案に記した。当初の3党案は財産流出の恐れが高いと認められた場合、通常1年ごとの財産目録などの提出を3カ月に短縮するとの内容にとどまっており、不十分との指摘があった。

松本恒雄・一橋大名誉教授 「実効性確保へ教団の動向注視を」

衆院通過した被害者救済法案は立憲民主党と日本維新の会が主張した包括的な保全と比べると、教団の財産が海外に移転されるリスクがある。法整備しないよりはよかったが実効性を高めていく努力が欠かせない。

法案は被害者による訴訟といった個別救済に依存している。個々の被害者が動かなければ、救済を進めることが難しい。被害者の組織的な対応が求められざるを得ない。

教団が法律の抜け穴を見つける可能性も考えられる。どのような動きを取っていくかを注視していく必要がある。

上記引用元:旧統一教会の救済法案成立へ 被害者の民事訴訟を後押し

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旧統一教会問題の与党救済法案の効果が薄く、限定的とみる理由 
野党法案は否決 被害者の声は届かず

YAHOO!JAPANニュース 12/5(火) 17:41 多田文明

元信者として、過去に旧統一教会を相手に裁判をしてきた実体験の大変さから、衆議院で可決された、与党法案における救済の効果は薄く、限定的とみています。その理由については最後にお話しします。

12月5日衆議院本会議で、自民、公明、国民民主から出された与党案「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律案に対する修正案」は可決され、立憲・維新からの野党案「解散命令の請求等に係る宗教法人の財産の保全に関する特別措置法案」は否決されました。

立憲・維新の包括的財産保全の法案が否決されたことについて、全国統一教会被害対策弁護団の阿部克臣弁護士は「被害者救済に最も実効性のある要(かなめ)の法案だと思っておりましたので、大変残念です。これが欠けたということで、今後の被害者救済に大きな不安を感じる」と話します。

財産保全の在り方を含めての検討の法案修正

先立って開催された衆院法務委員会にて、自由民主党の柴山昌彦議員は、与党案の修正点の一つに「(附則に)検討状況の内容について、財産保全の在り方を含めてこの法律の規定について検討を加えるものとする」をあげています。

立憲民主党の西村智奈美は「この附則の修正案ですと、法施行後3年を目途にと、随分、悠長な構えだなと見えるわけです。多額の財産の散逸や、隠匿の兆候があったり、実際にそれが行われたりした場合においては、施行後3年と言わずに、例えば1週間であっても1ヶ月、半年であっても必要があれば、財産保全に向けた法制上の措置を講ずることに向けての検討に入るということは、必要だと思っておりますけれども」との質問をします。

柴山議員は「附則第6条の規定に基づき、この法律の施行の状況等を勘案した結果、具体的に検討するべき課題が生じた場合においては、3年を待たずに財産保全の在り方を含めこの法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて法制上の措置その他、所要の措置を講ずることとなります。ただし、今の段階で、対応の時期をお答えすることは差し控えます」と話します。

「3年もかからず、実務で結果が出ると思う」との弁護士見解

この点について、阿部弁護士は「与党案における民事保全法の制度ではかなり、被害救済が難しいところがある」とした上で「今回の附則に、法律の施行状況を勘案して3年以内を目途に財産保全のあり方も含めて検討するが入りました。民事保全法で(の救済が)不十分だというのは、3年もかからず、実務で(難しいとの)結果が出るものと思います。そういう時に、果たして包括的な財産保全の法整備が改めて検討していただけるのか」と疑問を口にします。

そこで「『包括的な財産保全の検討の在り方』という文言をきちんと入れていただいたほうがいいと思います。通常、財産保全ということであれば、会社法に言う包括的なものを指すとは思いますけれども、本日の答弁だと非常に曖昧な形になっていますから」と言います。

「残念というよりも怒りを感じます」と被害者家族

被害者家族の中野容子さん(仮名)は「野党案が否決されたことは、残念というよりも怒りを感じています。与党の法案はダメというわけではなく、被害者の救済をある程度、やりやすくするものでしかなくて、国が、積極的に被害を受けた人たちを救済するというものではないからです」と話します。

また「自ら裁判を起こせない立場に置かれている2世の方などは、絶望的な気分になるんじゃないかと思っています。そんなことでいいんでしょうか」と危惧を口にします。

被害者家族の橋田達夫さんは「財産保全法案が成立しなかったことは、本当に残念でなりません。組織性、悪質性、継続性のある団体ですから、今でも財産隠しはやっているのではないかと思います。もしそれが発覚すれば(すぐにでも)財産保全を検討していただきたい」と強く話します。

被害者へのメンタルケアが不十分な状況では、実効性に疑問符

与党法案では、被害者自身が民事保全法で教団の財産を仮差し押えするわけですから、個人対教団の構図で戦うことになります。しかも教団は、過去に元信者(被害者)や被害救済をする弁護士をサタンとみて、攻撃をしてきています。そうした相手に対して、勇気をもって手をあげてくれる方がどれだけいるのか。現状では極めて少ないのではないかと思います。

何より、マインドコントロールが解けて、精神状態が不安定な人たちにどうやって、民事保全の裁判をさせていくつもりなのでしょうか。

メンタルケアについて、法案の審議のなかでも出ていましたが、法務省からは「霊感商法ダイヤルに寄せられた心の健康や心の悩みに関する相談に対しまして、よりそいホットライン、精神保険福祉センターなどを紹介している」との話でした。

具体的にどのような改善につながっているのでしょうか。それがはっきりとしていません。

教団名を隠した「未証し勧誘」により、教義を知らぬ間に教え込まれた信者らが脱会して、元の自分に戻るまでにはフラッシュバックなどがあり、相当な期間を要します。何より旧統一教会問題のメンタルケアは、元信者でないと理解できないところも多くあります。そうした方々の知見をしっかりうけて、改善につながったケースはどのくらい報告されているのでしょうか。

ましてや裁判では、個人対旧統一教会をしなければならないわけで、さらなる心のケアが必要となります。それが70代、80代の高齢者であることも考えられますが、その心と身を守る対応は十分になされているのでしょうか。
もし誹謗中傷を受けた時には、警察は対応を適切にしてくれるのでしょうか。まったくもってすべてが不透明です。

旧統一教会との裁判をしてきた経験から、極めて厳しい立場に追いやられる

私自身、元信者らとともに1999年に旧統一教会を相手に「違法伝道訴訟」の裁判を起こしました。いわゆる、教団名を隠した勧誘(未証し勧誘)の違法性を問うものでした。
その時、自分自身が教団内で経験してきた過去に向き合わなければなりません。嫌な出来事も思いださなければならないのです。

その経験からいえるのは、もしかすると裁判を起こした時に、当時に刷り込まれた恐怖心が出てきて、教団に戻ってしまう人もいるかもしれません。そうならないような心のケア態勢は整える必要があります。
法テラスを充実させる法整備とともに、心のケアの態勢をしっかりさせることこそ、必要なのではないでしょうか。

何より裁判を起こせば、それを知った一部の現役信者らが、それをサタン的行動とみて、本人のところに止めにやってくることが絶対にないとはいえません。本当に公的機関、周りの被害者家族、元信者のサポートなどがなければ、裁判などできないことです。

「被害者づら」の指摘にも耐えなければならない

私の時の裁判では、信者らが多くの席を埋め尽くして、傍聴席から信者と思しき人物からため息をつかれたり、「お前だって、同じことをしていたじゃないか」と被害者づらしやがってといったような言葉を投げかけられたりしたこともあります。
この問題が起きて、教団関連の記事を書いた時にも、心ない書き込みもありました。これは、多くの元信者らが経験していることだと思います。

民事保全の裁判は非訟事件(非公開の裁判)と聞いていますので、面と向かって裁判で言葉を浴びせられる心配はないかもしれませんが、もしかすると近所に住む信者から、私がうけたような言葉を投げられることもあるかもしれません。こうしたことも想定しておく必要もあります。

これら一つ一つの困難に対して、裁判をしている長きにわたり、個人で耐えなければならないのです。被害を受けて、さらに心に傷をうけることにもなりかねないわけで、金銭的に困っている被害者への法テラスの充実は必要だと思うところもありますが、通常の被害者が行う裁判とは違うという認識をもっての観点が大きく欠けています。

このことから、裁判の現実を知る者として、心のケア態勢が充分でない状況もあり、被害者が民事保全の裁判を起こすことは、かなり難しいだろうとの思いを持っているわけです。

阿部弁護士が話すように「3年もかからず、実務で(難しいとの)結果が出る」ことになると思います。施行後すぐに、立憲・維新が提案したような財産保全の必要性がみえてくることになると思いますので、その時、すぐに対応できるようにしておく必要もあります。

「参考人として弁護士、被害者の方をぜひ国会に呼んでいただきたい」

この後、参議院にて審議がなされますが、阿部弁護士は「参議院でお願いしたいのが、参考人として弁護士、被害者の方をぜひ国会に呼んでいただいて、被害者の声、弁護士の声をきちんと正式な国会の記録として残していただきたいということです。現在の法案を少しでも次の包括的な財産保全、被害者救済につながるような、参議院での修正をしていただければありがたい」と言います。

被害者の声を遠ざけた、被害者救済法はありません。まずはその声をしっかり聴くことから、今後、何が必要なのかが、見えてくるはずです。

上記引用元:旧統一教会問題の与党救済法案の効果が薄く、限定的とみる理由 野党法案は否決 被害者の声は届かず